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文献を紹介し、私の考えを気ままに書く

TFCC損傷の私の診かた

TFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷)はスポーツ選手だけでなく、転倒して手をついた際や手関節を頻繁に用いる仕事をしている場合などでも生じることがある。

 

 

TFCC損傷の方に私が行うことは問診・視診

・ペットボトルのふたを開ける時に痛いか?

・手をつくと痛いか?

・手をよく使う仕事に就いているか? 

・母趾球が盛り上がっている?または小趾球が萎縮している? etc...

 

 

問診が一通り終わると評価に移ります

1、手関節を背屈、回内がさせた際に手関節尺側に疼痛が生じる

2、fovea sign(TFCCの圧痛)が生じる

3、ulnocarpal stress testや尺屈位でのcompresionなどで疼痛生じる 

4、母指CM関節の撓側外転テスト etc...

 

 

おおよそ5分程度でここまでやります。最後にエコーにてTFCC周囲を確認します。

 

 

なぜエコーを用いるかというと尺側手根伸筋炎を見逃す、または間違える可能性があるからです。

 

 

尺側手根伸筋腱鞘床の一部はTFCCの重要な構成体として機能します。回内外中には尺側手根伸筋腱には常に摩擦が加わります。過度なストレスが加わり続けると腱鞘炎となり、TFCC損傷と似たような症状を呈するため、エコーを用いなければ私には判断が難しいです。

 

 

治療としてはエコーで炎症が強ければ、医師にステロイドの注射の依頼や手関節の固定もしくはサポーターを使用し症状を経過観察します。

 

 

炎症が強くなければ治療を行います¹⁾

・母趾内転筋のストレッチ

・小趾外転筋の筋力強化

・母趾CM関節の外転運動

・示指、中指、環指の屈曲運動(野球のツーアウトの手の形)

・小趾グリップの練習 etc

 

 

更に肩関節の内外旋可動域や前腕の回内外可動域も併せて評価し、治療することがあります。

 

 

参考文献

1)TFCC損傷に対する理学療法 -テニスにおけるグリップ動作を中心に-.関西理学療法 6:59-64,2006

足関節前方脂肪体

足関節後方と前方にはそれぞれ脂肪体が存在している。後方はKager's fat pad、前方はpretalur fat padと呼ばれており、足関節の運動に関与する重要な組織である。

 

 

今回は前方脂肪体について検討していきたいと思う。

 

 

皆さんご存知かもしれないが、前方脂肪体がどのように足関節の運動に関与するかというと脂肪体の柔軟性が関与してくる。

 

 

足関節の底背屈運動を行った際、エコーにて前方脂肪体の動きを観察すると背屈時には脂肪体の厚さが増大し、底屈時には脂肪体の厚さが減少するというものであった。しかし、これは前方脂肪体の一部でしかエコー観察していないため、3次元的な動きは分からない。

 

 

この脂肪体の柔軟性が低下すると足関節底背屈運動が制限されると考えられる。特に深く足関節背屈した際やしゃがんだ際に足関節前方に「つまり感」が生じる場合は、この脂肪体が原因の一つではないかと考えてる。

 

 

もう一点記載したいことがある

 

 

以前までは、前脛骨筋や長趾伸筋が関節包やpretalur fat padを前方へ引き上げると勉強会で聞いたことがあるが、あれは疑わしい。

 

 

前脛骨筋や長趾伸筋の深層には脂肪体が存在しているが、関節包は脂肪体の深層に存在しているため、直接前方へ引き上げることは難しいと考えている。

 

 

実際エコーで前脛骨筋や長趾伸筋、長母趾伸筋を収縮させてみても、脂肪体・関節包はほとんど変化はなかった。

 

 

つまり、足関節底背屈運動時に脂肪体は柔軟に変化はするが直接的に筋肉から受ける影響はほとんどないと考えられ、純粋な柔軟性が必要なのではないかと考えている。

 

 

参考文献

1)Richard Towbin, J. Scott Dunbar et al:Teardrop Sign: Plain Film Recognition of Ankle Effusion. AJR:134, May 1980

2)Peter A. J. de Leeuw, Pau Golano et al:The course of the superficial peroneal nerve in relation to the ankle position: anatomical study with ankle arthroscopic implications. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc.2010 May;18(5):612-7

中殿筋のトレーニング方法

変形性股関節症患者では中殿筋の萎縮に伴う筋活動の低下や体幹の不安定性等により、トレンデレンブルグ徴候が出現し、歩様の変化が生じやすい。

 

 

このトレンデレンブルグ徴候に対して中殿筋の強化、股関節内転筋力の強化、動作練習等の理学療法アプローチが用いられる。

 

 

今回は中殿筋の強化について考えていきたいと思う。

 

 

皆さんも経験があると思いますが、単純に中殿筋のトレーニングを実施し、筋力が強化されたとしても、トレンデレンブルグ徴候は消失しないということを。

 

 

トレンデレンブルグ徴候を消失させるためには、変形性股関節症患者の筋タイプの萎縮について考えなければなりません。

 

 

変形性股関節症患者の筋タイプの萎縮はタイプ2線維に多いと言われています(もちろんタイプ1も萎縮します)。つまり、このタイプ2線維を選択的に強化しなければ、トレンデレンブルグ徴候を消失させることはできません。

 

 

では、どうすれば選択的にタイプ2線維を強化することが出来るのでしょうか?

 

 

以下の文献を紹介します。

「術後股関節疾患患者に対する踵接地を意識させた 歩行訓練が股関節外転筋活動に及ぼす影響 ─表面筋電図による積分筋電図及びwavelet周波数解析─」

 

 

この文献は変形性股関節症患者10例と健常者10例を対象としており、踵接地を意識させた部分荷重歩行訓練が股関節外転筋筋活動に及ぼす影響を表面筋電図を用いて検討している。

 

 

結果は歩行時に踵接地を意識することで変股症患者の中殿筋における筋活動の程度は有意に増大した。また考察では、筋電図においてタイプ2線維の活動が高まったことが示唆できると記載してある。

 

 

そして「踵接地を意識させた歩行訓練は運動単位の活動状態を変化させ、中殿筋のタイプ2線維を対象とする選択的トレーニングとして有効な手段となりうるかもしれない¹⁾」としている。

 

 

この文献を読んで考えたこと

ただ単に中殿筋トレーニングをするのではなく、筋線維タイプから考えることでより効果的なアプローチに繋がる。これは変形性股関節症患者だけでなく、すべての疾患において考えられる事である。

 

 

参考文献

1)加藤 浩:術後股関節疾患患者に対する踵接地を意識させた 歩行訓練が股関節外転筋活動に及ぼす影響 ─表面筋電図による積分筋電図及びwavelet周波数解析─.理学療法科学 27(4): 479–483, 2012

股関節安定性に関与する靭帯とstability arc

前回は股関節関節包に関与する筋肉を紹介し、私の考えを記載した。

 

 

今回は股関節安定性に関与する靭帯とstability arcについて記載する。

「New Findings in Hip Capsular Anatomy: Dimensions of Capsular Thickness and Pericapsular Contributions」

 

 

まずは靭帯について

 

 

股関節には腸骨大腿靭帯、座骨大腿靭帯、恥骨大腿靭帯の3つが存在しており、腸骨大腿靭帯が最も強靭な靭帯である。

 

 

その腸骨大腿靭帯をこの文献では内側・外側に分けて検討している。外側は内側よりも上方から始まり、大腿骨頸部に沿って水平に移動し、そして大転子稜に沿って付着する。内側は、転子間稜の遠位内側面に付着する。

 

 

腸骨大腿靭帯の外側は反回頭と共通の起始を持っており、最も厚い関節包の部分である。そして、腸骨大腿靭帯外側と反回頭は関節包の組織を作り、リリース無しにそれぞれを部分的に動かすことは難しい。

 

 

stability arcとは?

 

 

stability arcは大腿骨頭のすぐ前方にあり、前股関節包を寛骨臼から転子間線に沿っておりハンモック様の機能を有し、大腿骨頭の前部亜脱臼または脱臼を抑制する。

 

 

stability arcは動的、静的な関与があり、動的な関与としては上側方から小殿筋、小さいが一貫して関与している前内側の大腿直筋の反回頭、前方・内側に関与するICがある。静的な関与としては腸骨大腿靭帯などが挙げられる。

 

 

この文献を読んで考えたこと

大腿直筋と腸骨大腿靭帯は共通の起始を持っており、関節包の組織を作るということは、やはり大腿直筋はとても股関節の前方安定性に重要である。

 

 

同じ起始があるということは大腿直筋の損傷は腸骨大腿靭帯の損傷でもあると考えることが出来る。直筋の肉離れや筋腱移行部が損傷すると、腸骨大腿靭帯への負担が大きくなるのではないかと考えている。

 

 

また、stability arcは小殿筋、大腿直筋反回頭、IC、腸骨大腿靭帯のどの組織の機能が落ちても安定性が低下すると考えられるため、評価が大切であると考えられる。

 

 

しかし、ICや大腿直筋反回頭の評価方法が明確ではないため、私には評価は難しいかな

 

参考文献

1)Brian L. Walters, John H. Cooper et al:New Findings in Hip Capsular Anatomy: Dimensions of Capsular Thickness and Pericapsular Contributions.The Journal of Arthroscopic and Related Surgery, Vol 30, No 10 (October), 2014: pp 1235-1245

股関節関節包と筋の関係

 股関節には大小さまざまな筋肉が付着、走行しており複雑な構造をしている。私自身は股関節関節包と筋肉の関係をあまり理解していないため、どの筋肉が股関節と密接に関与しているのか文献を読んでみた。

 

 

そのなかで私が面白いと思った文献を紹介します。

「New Findings in Hip Capsular Anatomy: Dimensions of Capsular Thickness and Pericapsular Contributions」

 

 

この文献では関節包の厚さ、起始、停止、関節包周囲構造、内転筋・直筋・梨状筋、短回旋筋、ICを含めて文書化されたものです。

 

 

では私が面白いと思った内容を箇条書きとします

「iliocapsularis、大腿直筋反回頭、大腿直筋共同腱、外閉鎖筋、および小臀筋の腱はすべて一貫して関節包に寄与しているが、梨状筋は関節包への付着がない¹⁾」

 

Wardらによって最初に記載されたiliocapsularisは、関節包へ最大の寄与を示した。すべての標本において、それは、下前腸骨棘の下側面から始まって小転子のすぐ遠位側への挿入まで、前内側関節包の全長に付着していた¹⁾」

 

「大腿直筋の反回頭は一貫して寛骨臼前上方の縁を覆うようにして関節包に関与した。小臀筋は大きく、側方に広い関節包付着を示し、これは大転子の骨付着部に近接していた¹⁾」

 

「外閉鎖筋腱は内閉鎖筋と双子筋群と共同腱となり、後方関節包に沿っている。各々は、後部寛骨臼縁付近の後方で一貫した関節包への付着を示した¹⁾」

 

「外閉鎖筋腱の関節包寄与は、関節包の後下方にあり、一方、共同腱の関節包寄与は、関節包の後上方にあった¹⁾」

 

 

この文献を読んで考えたこと

やはり、股関節前方の安定性としては大腿直筋、iliocapsularis、小殿筋は関節包に付着しており強靭な線維、幅広い付着を有しているため、重要であると考えられる。

 

 

一方、内外閉鎖筋や双子筋群は関節包に付着しているが、付着面積が少ないので直接股関節の安定化に作用すると考えるよりも、股関節の求心位を保つ働きがあるのではないかと考えている。

 

 

参考文献

1)Brian L. Walters, John H. Cooper et al:New Findings in Hip Capsular Anatomy: Dimensions of Capsular Thickness and Pericapsular Contributions.The Journal of Arthroscopic and Related Surgery, Vol 30, No 10 (October), 2014: pp 1235-1245

変形性股関節症の中殿筋組成

変形性股関節症の方は股関節外転筋力の低下が生じ、歩行時にトレンデレンブルグ徴候を呈することが多いです。

 

 

しかし、外転筋力を強化しただけではトレンデレンブルグ徴候を陰性化させることは難しいです。

 

 

今回はトレンデレンブルグ徴候を陰性化させるための一つのヒントになる文献を紹介します。

 

 

「SELECTIVE TYPE II FIBRE MUSCULAR ATROPHY IN PATIENTS WITH OSTEOARTHRITIS OF THE HIP」

 

 

この文献では変形性股関節症の中殿筋・大殿筋・大腿筋膜張筋の線維タイプの変化を調べているものです。

 

 

結果

大殿筋

・Type 1(赤筋)とType2(白筋)の比率はコントロール群と65歳以下の変形性股関節症群では差はあまり認められない。しかし、コントロール群と65歳以上の変形性股関節症群では差が認められる

・線維の直径はType1、Type2ともに変形性股関節症群がコントロール群よりも小さい

 

中殿筋

・Type1とType2の比率は変形性股関節症群がType1が多く存在しており、コントロール群はType1、Type2ともに同等の存在であった

・線維の直径はType1、Type2ともに変形性股関節症群がコントロール群よりも小さかった

 

 

この文献を読んで考えたこと

変形性股関節症患者では中殿筋のType1線維が多く存在しており、筋線維の直径は減少している。

 

 

筋タイプの変化が生じ(Type2からType1への変化)、直径が減少するということは速筋の筋出力は減少すると考えることが出来る。

 

 

変形性股関節症患者のトレンデレンブルグ歩行は瞬間的に起こる動作であるため、速筋の萎縮と数の減少により、生じると考えることが出来る。

 

 

つまり、変形性股関節症のトレンデレンブルグ歩行を改善させるためには、速筋の筋力強化と動作練習をしなければならないと考えられる。つまり、側臥位で中殿筋強化を行っても改善しないと考えられます。

 

参考文献

1)ANTON SIRCA, MAJDA SUSEC-MICHIELI:SELECTIVE Type II FIBRE MUSCULAR ATROPHY in PATIENTS WITH OSTEOARTHRITIS OF THE HIP.Journal of the Neurological Sciences, 1980, 44: 149-159 

大腿直筋の損傷

前回、大腿直筋の起始部には脂肪組織が存在していることや、周辺には筋肉も多数走行しており、「Direct Headは縫工筋および腸骨筋によって覆われ、Indirect Headは小臀筋によって覆われていた¹⁾」と報告されていることを紹介した。

 

 

今回は大腿直筋の周辺構造や組織学から大腿直筋の損傷について考えてみたいと思います。

 

 

An anatomical study of the indirect tendon of the rectus femoris using ultrasonography.

 

 

上記の文献では「Indirect Headの組織学的分析は、太いコラーゲン線維が規則的に存在しており、平行線維の密集した結合組織を明らかにした」としている。

 

 

コラーゲン線維は硬い組織であり、それが密集しているということは大腿直筋のIndirect Headはかなり丈夫な組織であると考えられる。

 

 

一方で硬く、丈夫な線維であるため股関節(寛骨臼)の牽引力は相当なものと考えることが出来る。股関節は筋や脂肪体が存在しているため、周辺組織が硬くなるとより牽引力が伝わりやすくなることも考えられる。

 

 

牽引力が生じる、スプリントやキック中の最大伸展を伴う強い遠心性負荷が生じると大腿直筋に損傷を与える原因と考えられる。

 

 

上記の文献では「Indirect Headの完全な裂傷または部分的な裂傷は、Direct HeadおよびConjoint Tendonよりも頻繁である¹⁾」と報告しています。また、「大腿直筋近位部の損傷はIndirect HeadからDirect Headへ、そしてConjoint Tendonへと進行する可能性がある¹⁾」と報告されています。

 

 

direct Headの牽引傷害の結果としての子供におけるAIISの恥骨剥離に関連する。またIndirect Headの牽引は寛骨臼の外側境界の成長軟骨も傷つけることもある。

 

 

成人では、Indirect Headの石灰化腱障害も起こることがあり、急性吸収期に股関節炎を模倣することがあるとも報告されている。

 

 

 

参考文献

1)A. Moraux R. Wawer et al:An anatomical study of the indirect tendon of the rectus femoris using ultrasonography.European Radiology December 2015, Volume 25, Issue 12, pp 3614–3619